![]() 今月は7月25日号鶏鳴新聞記事を掲載させていただきます。
成績と効率を徹底追及 初期投資+ランニングコスト 連結金額で設備選定 東洋システム梶i安田勝彦社長―本社・岐阜県各務原市金属団地97―4)は、6月20日に千葉県匝瑳郡野栄町で、27日には奈良県五條市で、それぞれ「頑張る機械化家族養鶏見学会」と「最新レイヤー設備説明会」を開いた。同社では、レイヤー業界が大きな変革期を迎え、農場間での競争激化が予想される中で、当初の設備費だけでなく、その後のランニングコストを含めた農場設備の最適化が経営に与える影響が一層大きくなっていることに注目する必要があるとして、農場見学会と最新設備の説明会を開いたもの。6月20日の見学会には、東日本地区の生産者や飼料メーカー、鶏卵関係者など約80人、27日には西日本地区の関係者らが約70人参加するなど、関心の高さをうかがわせた。 越川エッグファームを見学 6月20日に訪問した千葉県・野栄町の越川エッグファーム(越川恭成代表)は、家族養鶏で成鶏を約4万羽飼養し、卵は養鶏仲間八人と共同で設立した拒x瑳ジーピーセンターを経由して生協向けに出荷している。 昨年10月の台風で鶏舎の一部が倒壊したこともあって、今回、東洋システムのハイテムサルメットウイスクケージシステムによる完全夏場対策(クーリングパット付き)システム開放鶏舎を建設したもの。 東洋システムの開放鶏舎を採用した理由について越川代表は、「我々は首都圏の生協に卵を出荷している関係から、東洋システムの設備を導入することに若干のためらいもあった。というのは、1つの生協は開放鶏舎ならよいが、ウインドレス鶏舎は禁止となっていたためである。 GPを共同設立した皆さんとも、どのような鶏舎がよいか相談するとともに、ある飼料メーカーの部長からは、『越川さん、今度鶏舎を建てるなら東洋システムの鶏舎を建てた方がよいですよ』と勧められ、栃木県のある養鶏農家を見学させてもらった。築10年が経っていたが、ケージシステムは何らの故障もなく、これなら20年は持つとの判断などもあって、基本は開放鶏舎で、夏場はクーリングパットを使ったトンネル換気の鶏舎を建設することにした。 多くの生協のバイヤーにも視察してもらったところ、1つの生協からは、このシステムの鶏舎の卵をぜひうちに送って欲しいと言われた。もう1つのウインドレス禁止の生協も、今回の夏場対策のクーリングパットを高く評価し、『これであれば夏場の卵の品質劣化も防げ、水っぽくならないし、エサも順調に食べられる。将来型の開放鶏舎ですね』と言っていただいて、本当に胸をなでおろした。 結果的にもランニングコストが少なくて済み、産卵成績面での違いなどを合わせれば、長い年月では大変な金額の違いとなってくるのではないかと思う」と話している。 新鶏舎は基本は開放鶏舎で、通常はカーテンのコントロールによって換気するが、夏場に向かって温度が上がってくると、カーテンが自動的に閉まり、自然換気から強制換気(トンネル換気)に切り換わる。さらに、温度が上昇する夏場には、鶏舎正面と横に付いたクーリングパットに水が流れて冷却モードになる。万一の停電時には、直流24ボルト駆動の「ドライブユニット」が作動して、カーテンを自動的に開け放して換気する安全装置も付いている。 細部にわたってきめ細かな配慮 導入したハイテムサルメットウイスクケージは、6段4列(上下3段に分かれて中間通路がついている)で、ケージ寸法は間口50センチ×奥行き60センチ(ウイスクを除く奥行き55センチ)。ウイスクは@鶏糞乾燥にかかる電気コストが、エアパイプ方式に比べて半減するAフィルター掃除などのメンテナンスがなく、手間がかからないBウイスクブレードが動いていることによって、ケージ内に風の流れが起き、直立ケージの欠点のひとつであるケージ内の環境が改善されるC鶏糞の乾きがエアパイプ方式と比較して5〜10%水分が少なく、安定している――などの特長がある。 さらに、徹底した水洗いを可能にするため、ケージ部分に隠れるところがないこと、鶏糞外部搬出方法をチェーンコンベアにすることで、鶏糞周りの清掃をしやすくしている。 日常の除糞管理では、ベルトケージによるコクシや雑菌が問題となっている例が見受けられることから、鶏糞ベルトが天井側にきた時に、鶏がつつかないよう、ノンスリップ特殊ラバープレッシャローラーを使用して、360度オートストップ(鶏糞側とケージ天井側を同一位置に管理)としている。 除糞ブレードは、駆動ローラーのほぼ真下に位置し、大半の鶏糞、羽根などが落下した後、ベルトにしっかり当たるようになっている。さらに、除糞ベルトを動かすと同時に、ケージ列下のホコリもスクレーパーで搬出される仕組み。 給餌機は、エッグクリーナー付きホッパーフィーダーで、長さが74メートルと長いために、ケージ列の真ん中でエサの補給を受ける。 直立ケージは破卵が多いのではないか、と言われるが、ケージではジェントルフロアとジェントルワイヤーの働きで破卵、メクラキズを徹底的に追放しており、他社のものに比べ2〜3%破卵が少ないとのこと。集卵機の部門も、@破卵知らずA集卵能力五〇%アップB軟卵除去がほぼ100%C乗り移りタイミング調整がシンプル――などの特長を持ち、昨年6月に発売のニューエスカレータを導入している。 トンネル換気のハイテムファン(羽根径50インチ、モータ出力0.75キロワット)は14台で、屋根と同じくらいの高さのダストチャンバーが付いているため、外に出て行くホコリも少ない。 さらに、ハイテムファームコンピュータ(ファームマネージャー、ファームスタッフ)を導入して、食下量や飲水量、産卵量、温度などがパソコンの画面上で一目でわかるようになっているほか、異常やトラブルも、画面に黄色や赤が表示されてすぐにわかるようになっている。 設備による第2の利益 農場を見学した後、国民宿舎「のさか望洋荘」に場所を移して東洋システムの最新レイヤー設備説明会が開かれ、@レイヤーの最新システム鶏舎(成鶏舎と育成舎)Aハイテムセコノブ(鶏舎排気利用鶏糞乾燥システム)Bクラックレスエッグシステム(破卵追跡チェックシステム)Cハイテムファームコンピュータシステム(最新バージョン)DハイテムAT高品質レイヤーハウスシステム(亜鉛ドブ漬けフレームモジュール建築)――などについて詳細に説明した。 ![]() 最新設備を説明する東洋システム・安田勝彦社長(左)と 越川エッグファーム越川恭成代表(右) 説明会で安田社長は、「日本の養鶏は、これからは自由競争の時代を迎えると同時に、2006年からは人口が減少するという2つの要素で、本格的な激動の時代を迎えるのではないかと思う。 このような中で、規模を拡大し、合理化を進めるアメリカ型の養鶏と、ヨーロッパ、特にオランダのように、8割のエサを輸入に頼っていながら、家族養鶏を中心に卵の7割を輸出している養鶏がある。きめの細かさでは、アメリカよりオランダとなるが、日本はさらにきめ細かさが要求されるわけで、こうした2つの先進国の例を参考にしながら、日本の養鶏を築く時に来ているのではないかと思っている。 養鶏は鉄道事業と同じで、農業の中で最も装置産業化しているレイヤーの設備も、償却後の10年で稼ぐことがこれからの基本原則になる。それだけに、初期投資の多い少ないだけでなく、20年間のランニングコストを加えた連結金額で設備を選定することが、装置産業化しつつある採卵養鶏で儲ける秘訣である。 10万羽単位で計算して、20年間の売り上げは40億円(ヘンキャパ羽当たり17キログラム生産、1キログラム当たり118円で計算)。エサをキロ5円安く買ったとして3億4千万円の収益差、タマゴをキロ10円高く売ったとして同じく3億4千万円の収益差になる。これらはいわば第1の利益といえるが、これからはランニングコストを考えた設備を行なうことで、第2の利益が出てくることに注目する必要がある。 具体的には、6つのランニングコスト差が生み出す大きな利益がある。すなわち@糞乾電気代A破卵率B要求率(エサこぼし、鶏舎温度)C産卵率(鶏舎環境、機械安定性)D労務費(操作性、機械安定性)E耐久性――で、これによって10万羽で20年間で約4億2千万円の差になる。作れば売れる時代が終わった今、初期投資に20年間のランニングコストという連結金額で養鶏を考えていくことが、いかに大事であるかを理解して欲しい」と強調した。 27日の奈良県五條市の竹村養鶏場のウインドレス鶏舎(ハイテムサルメットウイスクケージシステム・新トンネル換気)見学会でも、設備投資後のランニングコストがかからない機器性能の一端を確かめた。 東洋システムでは、競争力のある農場作りを目指す生産者の設備ニーズに応えるために、同社が開発を進めているエアパイプを必要としない、クリーンで省エネ型のハイテムセコノブ(鶏舎排気糞乾システム)の見学会を8月8日(金)に岐阜県下で開くほか、亜鉛ドブ漬け鉄骨フレームを使用し、サンドイッチパネルを鶏舎内側から貼り付け、ホコリがたまりにくく、クリーニングがしやすいハイテムAT高品質ハウスシステムの見学会を、今秋に千葉県下で開く予定にしている。 |
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![]() 越川エッグファームの夏場対策付きシステム解放鶏舎 ![]() 内部はハイテムサルメットウイスクケージシステム ![]() ジェントルフロアとジェントルワイヤーの働きで破卵が減少 ![]() 集卵機の部分も破卵知らずのニューエスカレーターを導入 ![]() メンテナンス性のよい規格化された電気盤を設置 ![]() 最新バージョンのハイテムファームコンピュータシステムを導入 |
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