2004年1月号


グローバル時代に築く競争力

東洋システム椛纒\取締役社長 安田勝彦
今月号は
鶏鳴新聞新年号への投稿を掲載させていただきます。


東洋システム椛纒\取締役社長
安田勝彦


 当社創業の三十年前には、不謹慎な言葉ですが「阿呆のトリ飼い」、「財産をなくす早道はトリ飼い」といった話がありました。当時の採卵養鶏家数は百三十万戸で、一万羽以上経営の千二百戸の占める羽数は二三%でした。これが一昨年の農水統計によれば、一万羽以上経営二千三百戸の羽数シェアは九四%に及んでいます。つまり百万戸以上のトリ飼いがこの業界から去ったということです。

 今年からは生産者の主体的判断に基づく生産が浸透していく中、勝ち残る養鶏には戦略が求められ、的確な戦略にのみ利益がもたらされる時代になると予測されます。

 養鶏経営は阿呆は論外で、智慧と行動が要求されるパワーエリートの時代になったと言えます。飼料の大部分を輸入、タマゴの大半を輸出するオランダ養鶏は、戦略、戦術養鶏を地で行っていると思います。本格競争時代における戦略の柱は二本あると考えます。



第一の柱「販売」

 自分で作ったタマゴは自分で売る。これは有力な戦略ですが、流通関係業者とのパートナーシップで消費者に至る信頼、信用のパイプを築く戦略も直販と並んで有力な戦略だと思います。いずれの戦略を採っても、二つの大切なポイントがあります。

 一つは日本はキメ細かさ世界一の国であり、世界有数の経済大国である点です。 日本酒だけでも何百種類あり、最近では焼酎ブームで何百種類がこれに加わり、さらに多様なビール、ワインが加わり、競争を繰り広げています。女性の化粧品然りです。米国とは比較になりません。文化が違います。欧州文化も日本の多様性、キメ細かさには及びません。

 山、川に隔てられ、四季の豊かな日本に育った文化が背景にあります。なくてはならない食材タマゴの販売戦略の原点は、ここに置く必要があります。業務用は現時点では十年前のテーブルエッグがそうであったように、タマゴの差別化は進んでいませんが、トレーサビリティ潮流の中、業務用、加工用も差別化が進む可能性があります。

 二つ目は、一万羽の養鶏であっても、何百万羽の養鶏と販売条件の若干の差はあれ、肩を並べて消費者に直売できる事実です。これは一万羽のブロイラーを肥育しても、消費者に直売できないブロイラー養鶏の場合との大きな違いです。

 養鶏の原点は生き物であり、どこまで行っても工業製品と同じ手法で、すべてマニュアル化することは非現実的です。できたとしても現場を重視するオーナー経営者の成績、管理レベルに達することは至難の業です。量より質が消費者に好感をもって迎えられる時代です。手造りハムが喜ばれる時代です。何百万羽養鶏とオーナー現場養鶏いずれにもメリット、デメリットがあり、この二つ目の側面と一つ目の側面をいかに組み合わせて販売戦略を固めるかが重要なポイントだと思います。



第二の柱「農場設備」

 家畜排泄物法が本年秋から完全施行されるに伴い、採卵養鶏は今後ますます装置産業化されます。装置産業にはエネルギーコスト、ロス率、所要人数、修繕費、耐久性など、ランニングコストの差が初期の設備費差を上回る例はよくあります。中国のトラックを買う運送業者はありません。中国のディーゼルエンジンを貨物船に装備する船会社もありません。厳しいからこそ、初期設備費に若干の差(百円台の差)はあっても、ランニングコストのかからない(これからの設備サイクル二十年で、千円台の差)設備を選ぶことが、底力ある競争力を備えた養鶏経営を築くもう一つの大切な戦略です。

 本年も、グローバルな協力工場体制を軸に、第二の柱作りにお役に立つ会社を目指し努力を続けます。






2月号へ