鶏舎を山間地で経営する。工場暖房・体育館暖房、定量ポンプは株式会社ハイテム

  2004年2月号


創意工夫を経営に生かす
有限会社 北群ファーム(群馬県)

(有)北群ファーム社長 林 寿一さん
(有) 北群ファーム社長 林 寿一さん

平成15年度全国優良畜産経営管理技術発表会で農水省生産局長賞を受賞されました
(有)北群ファーム様をお訪ねしました。

報告者:技術営業グループ 東日本担当 取締役部長 小泉 均


<< 鶏舎概要>>

ハイテムブレードケージシステム
換気方式:新トンネルウィンドレス
ケージ列:直立7段2列 78m中間通路付
糞乾方式:ハイテムブレードシステム
棟数:3棟 1棟2室×3


<<林寿一さんのお話>>

(有)北群ファームは群馬県新治町で長らく開放鶏舎主体の養鶏をしていましたが、周りには猿ヶ京温泉の旅館等があり、観光地のなかでの養鶏経営は長く続けることが出来ないと考え、平成11年、5kmほど離れた山間部に移転をしました。しかし、移転をしても同じやり方をしていたら、また同じ問題が起きるとの思いがあり、良い品質の卵の生産、鶏糞処理のしやすさ、ハエ、臭いなどの公害問題を解決しうる要素を兼ね備えた鶏舎システム、さらに家族経営を目指しており効率化が図れることを目標としました。

以下の検討の結果、鶏舎システムは新トンネル換気方式ウィンドレスハイテムブレードケージシステムとなりました。

1)新トンネル換気方式により鶏舎内の環境を一律にコントロールできる。
2)夏場は、通路風速があることによる食下量の低下防止
3)冬場の舎内温度維持
4)換気を利用した、鶏糞発酵の促進
5)ブレードケージシステムのよる鶏糞乾燥促進
6)ファームコンピューターを取り入れた農場管理の効率化

平成12年舎棟が完成、おかげさまで順調に稼動しています。長男も農場に入り家族規模での養鶏経営が軌道に乗りました。 卵についても出荷先の反応も好く自信があるものが出来ています。また、鶏糞も順調に処理できています。
今回、全国優良畜産経営管理技術発表会で農水省・生産局長賞をいただき、難しい局面にある養鶏経営にご参考になればと考えています。


以下に鶏鳴新聞12月5日号記事を紹介します。


農場外観





規模拡大を山間地に求め創意工夫で難局を克服

群馬県利根郡  許k群ファーム

経営の概要

 経営主の林寿一社長は、三十年以上養鶏業を営み、これまで猿ヶ京温泉の地域で養鶏を行なってきたが、吾妻利根地域畜産基地建設事業に参加して、七万羽から十三万羽に経営を拡大した。
 養鶏場建設に当たっては、集落で養鶏業を営んでいる時は、近隣から臭気やハエの苦情で苦慮したことを念頭に置き、自然の換気を利用したウインドレス鶏舎を建設した。
 この結果、冬の外気がマイナス二十度Cくらいでも鶏舎内温度は二十度Cに、夏は夜間の温度が二十度C以下となり、飼料効率が高まり、軟便が少なく、鶏は健康でかつ品質の良い卵を生産し、産卵率の低下を防止している。
 鶏舎の管理はコンピュータで行ない、鶏舎内温度・外気温・鶏の年齢・卵の生産量・飼料などをコントロールしている。
 卵は農協経由でJAショップ、「たくみの里」、民宿・旅館に新鮮卵を提供して、地産地消に積極的である。地域の農業祭(農協十一支所、新治村など)にも参加し、鶏卵の消費拡大に努めている。
 林氏は、地域のリーダーとして農協監事や、県養鶏協会の副社長として活躍している。

 創意工夫技術の主な特色は次の通り。

 @厳冬期における堆肥発酵熱を活用した融雪
 当地域は冬期積雪が1メートルに達することから、畜舎周辺や付帯施設の融雪は重要な作業となっている。このため、堆肥舎の横壁に水道パイプを設置し、発酵熱を利用した温水で屋根、道路やその他融雪の必要な施設に活用する省エネ方式を取り入れている。

 A鶏糞乾燥施設の効果的な配置
 ウインドレス鶏舎から排出された鶏糞を一時堆積して、向かい側の堆肥盤に貯蔵する方式を採用している。
 鶏舎から搬送された鶏糞は、鶏舎に付設した一次貯留場に堆積され、相向かいに設置された十層の堆肥盤で三〜四回の切り返しを行なって第二層に移動して、堆積発酵を促進する。同様に、それぞれの堆肥盤で切り返し作業を行ないつつ、順次第十層まで移動していく。
 堆肥盤にはウインドレス鶏舎からの暖かい排気が常時新鮮鶏糞の表層に当たるため、鶏糞の乾きが早く、幼虫の羽化がなく、ハエの発生が少なく、衛生的な鶏糞処理法となっている。
 堆肥盤で調整された鶏糞は、六十日から九十日経過すると発酵鶏糞が調整されて、発酵の進んだものから順次、鶏糞撹拌施設に移動する。移動に当たっては、ホイルローダを使用して撹拌施設に投入される。
 撹拌乾燥施設では鶏糞が粒状になるまで乾燥させるが、この期間は約一か月である。

 B鶏糞販売の確立
 撹拌施設で調整された鶏糞は、八〇〇平方メートルの床面を持った乾燥施設にトラックで搬出して袋詰めされ、「有機トップ」の商品名で農協を通して畑作農家へ販売している。販売量は三分の二が農協経由、三分の一が直接販売である。
 全生産量に占める販売量は約七〇%程度で、残り二五%は敷地に植栽した梅、養鶏場までの道路脇の植樹に使用し、五%は地元農家へ無償提供している。

 C卵質向上対策
 卵質向上には、飼養管理技術以外に保存車(十トン車1台)を導入して配送しており、品質の維持に努力している。

 D環境美化対策
 農場は猿ヶ京の住宅地から約五キロメートル山地に入ったところに位置し、人家の全くないところであるが、畜産施設のイメージアップに努力して、沿道にヤマボウシ、モミジ、ウツギ、白樺、アジサイなどの花木を二千本植栽して、その管理を行なっている。また、養鶏場の敷地内には梅の木千二百本を植えるなど、将来を見据えた環境美化対策を取り入れている。

 E特殊卵としての販売
 殺菌液卵の販売を開始して、年間四十トンの実績を持っている。販売先は観光客の多い苗場のホテルと契約している。温泉卵としても年間五十万円くらいの販売を行い、付加価値の向上に取り組んでいる。

 F外部からの支援
 沿道の植栽については、地元住民から苗木の無償提供を受けるほど、住民と連携のとれた山間地養鶏が進んでいる。


畜舎周辺の環境美化に関する取り組み

 @花木の植栽
 国道十七号線から養鶏場に至る沿道に、地域住民が提供したヤマボウシ、ウツギ、アジサイ、モミジ、ツツジなど、花木二千本を植栽して景観の整備に努めている。新設養鶏場敷地にも、同種の花木・梅が植栽され、長期的景観の確保に勤めている。

 A畜舎周囲の環境美化
 養鶏場玄関には、鶏霊碑・犬霊碑が建立され、周囲は山野草・花木で整備されている。畜舎周囲は清掃が行き届き、広大な敷地の中での環境美化は進んでいる。
 設立当時は、野猿の出没によって被害を招いたが、犬の飼育によって野猿二百匹(犬一頭で五十匹の出没防止が可能)が全く出没しなくなり、安心した経営が可能になった。


北群ファームの経営実績・技術等の概要

(1) 経営実績



(2) 技術等の概要







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