工場暖房・体育館暖房、定量ポンプ、鶏舎の設備は株式会社ハイテム

  2004年11月号



2002年2月から連載のユーザー様訪問は、インフルエンザ発生の可能性が高まる冬期を迎え一旦終了し、今月から10回の予定で二世のためのレイヤー設備講座を連載させていただきます。 ご理解ご支援の程お願い申し上げます。


二世のためのレイヤー設備講座


担当: おやじ / 弊社社長 安田 勝彦

 基礎的、実践的な内容に心がけ、次世代を担っていかれる皆様の何かの参考になるよう進めたいと思います。 よろしくお願い致します。
  次のテーマを予定しています。

  第1回  日本における鶏舎設備の変遷
  第2回    ケージシステム、平飼システム
  第3回   給餌、給水システム
  第4回  集卵システム
  第5回  換気、ファームコンピュターシステム
  第6回  育成舎
  第7回  鶏糞処理
  第8回  動物愛護
  第9回  鶏卵生産費、収益性を考える
  第10回 レイヤー農場の未来



第1回 日本に於ける鶏舎設備の変遷

−1970年代から現在まで−


1.低床開放鶏舎時代

 1970年前後の鶏舎の主流は間口の狭い開放鶏舎、又は間口の狭い鶏舎を連結したノコギリ鶏舎と呼ばれた鶏舎で、ケージは1ケージに2羽又3羽、一部では1羽の単飼ケージが使用
され、通路をはさんで2〜3段のケージ列とする方式が主流でした。

 給餌は配餌車、集卵は手押しの集卵車、除糞は両翼をケージ下に拡げた除糞車を使用する方法が一般的で、多くの肉体労働を伴い一人当りの全国平均飼育羽数も5000羽以下でした。 給水は鶏舎に勾配をつけ、流水トイを使用する方法がほとんどで、排水があり、特に夏期は飲水量が過多になり、水様便になることも多く、ウジやハエが発生し、悪臭も発生しやすく、養鶏場は公害発生の元凶となることも度々でした。




2.高床鶏舎時代

 この様な状況の中、1975年頃から、鶏舎を高床式にし、床下に鶏糞を鶏群1〜2サイクル分を堆積させる高床鶏舎が急速に普及しました。 堆積鶏糞に扇風機、送風機で風を当てる、或はケージ下にスラット状の桟を入れる等の工夫をすると堆積鶏糞がある程度発酵し減量、鶏糞処理にかかる手間が省けることが普及に拍車をかけました。

この間ホッパーフィーダーが普及、給餌の自動化が進み、集卵についても順次自動集卵機が普及し始めました。

高床鶏舎はモニターとカーテンを備えた開放鶏舎が多く、一歩進んだ自動化と無公害化を目指しウィンドレスで建設される鶏舎も目立つようになりました。

 高床鶏舎は鶏糞を床下に堆積させていることから時としてハエの大発生に見舞われることがあり、又ネズミの巣になり、ネズミが夜間エサを食べ要求率の低下、衛生問題を引き起こすことがあり、環境面、衛生面から一歩進んだ鶏舎システムが求められるようになりました。


高床開放鶏舎


高床開放鶏舎内部


高床鶏舎土間部


高床ウィンドレス鶏舎


高床ウィンドレス鶏舎内部

3.直立型糞乾ベルトケージ時代 −レイヤー設備はアメリカ型からヨーロッパ型へ−

このような状況の中1985年頃から注目を集めはじめたのがドイツ、オランダで開発された直立型糞乾ベルトケージでした。

 これ迄のケージシステムはケージをヒナ段式に重ねる通称Aラインケージシステムが主流でしたが、ベルトケージはケージを直段に重ね各ケージ間に集糞用ベルトを導入、このベルト上にエアパイプを取付けエアパイプから吹出す風により鶏糞を水分65〜75%前後に予備乾燥、予備乾燥された鶏糞を4日〜1週間毎に鶏舎外に搬出することを特徴とするシステムです。

 鶏糞は予備乾燥された状態で舎外に搬出されるため鶏舎内でハエが発生する可能性が少なく、且つ直立型で6〜8段の多段化が可能になりました。

 土地利用効率はこれまでの高床鶏舎に比べると約2倍、1970年代の開放鶏舎に比べると約4倍になり、且つ公害もコントロールしやすくなったことから、都市近郊での養鶏も可能になり、養鶏産地構造の変革をもたらすことにもつながりました。

 鶏舎型式はケージシステムが開発されたドイツ、オランダで多く採用されていた自然換気式屋上排気型ウィンドレスからスタートしました。しかしドイツ、オランダに比べ、総じて夏期温度が高く夜間冷却が少ない日本の気候への適応性が問題になり、換気扇を併用する屋上排気型ウィンドレスへと変遷をとげていきました。

 又、ヨーロッパではタマゴは洗卵せず、重量選別のみで流通させる事情からケージ内の汚卵減少に重きが置かれ、タマゴ転出をよくするためケージ床面が固めで、直立型ベルトケージは破卵が多い点も問題になりました。

 ケージ破卵については先進的メーカーが機械設備試験鶏舎を建設し改良研究に取組み改善、換気方式も夏場に鶏舎内で空気攪拌効果を出しやすい天井入気陽圧鶏舎が導入される等改善が進みました。


直立糞乾ケージシステムを導入した天井排気型鶏舎


直立糞乾ケージシステムを導入した陽圧換気鶏舎


直立糞乾ケージシステムを導入した陽圧換気鶏舎内部

4.日本に合った完成度の高い鶏舎システム時代−レイヤー設備は日本に適した型式へ−

 地球温暖化の流れで1995年頃から目立ち始めた真夏日の増加、春秋の短期化の傾向の中、鶏舎にも更に徹底した夏場対策が求められるようになりました。
又厳しい農場向競争を生抜くため農場成績の一層の向上が求められるようになりました。

このニーズに応えて行ったのが次の二つのシステムです。


1)新トンネル換気

 更に徹底した夏場対策を求めて開発されたのが次の特徴を有する新トンネル換気です。

  (1) 全ての換気扇を鶏舎後部に取付け、全ての空気を後部に向って動かすことにより
      消費電力を抑え、夏場の鶏舎内風速を最大化します。

    (2)  全ての空気を鶏舎後部に向かって動かすことにより、鶏舎内の空気のよどみがなくなり
           鶏舎内のホコリが溜まりにくくなり、トリに良い環境を与えます。

    (3)  水量が確保できる農場では鶏舎前部にクーリングパッドを取付け、酷暑時間帯の
           乾湿温度差を利用し簡易冷房を行うことができます。

    (4)  冬場は鶏舎前部からのみの入気から、鶏舎側面からのゾーン入気(鶏舎長手方向の
           インレットを2分割乃至3分割にします)に切替え、コンピュータ制御により鶏舎前後
           温度の均一化を図ります(従来型トンネル換気から新トンネル換気への革新ポイント
      )。

    (5)  鶏舎後部に集中的に排気されるホコリをコントロールするダストチャンバーを設けます。

    (6)  停電時の各入気口の自動開閉等停電対策の向上を図ります。


2)ファームコンピュータ

 鶏舎温度、給餌量、飲水量等鶏舎管理に必要な基礎データを24時間常時監視、これに警告、警報システムを組合せ、小さな異常を素早くキャッチし先手対応で農場成績の安定化、向上を図ります。

 上記二つのシステムの開発、普及により、夏場に弱い傾向のあった糞乾ベルトケージの問題点が小さくなり、又1人当り管理羽数が増加する中での精密養鶏が可能になり、直立型ベルトケージが日本の気候、四囲の環境下でより一層性能を発揮し効果的なタマゴ生産が安定して行われるようになりました。

 上記二つのシステムは開放型鶏舎にも応用される例が出はじめ、ファームコンピュータの利用と同時に、夏場はカーテンを閉めウィンドレス化しクーリングパッドを活用するシステム型開放鶏舎も実用化されるようになりました。


新トンネル換気成鶏舎


新トンネル換気成鶏舎内部


新トンネル換気育成舎


新トンネル換気育成舎内部


ファームコンピュータ

5.鶏糞処理の高度化 −次世代養鶏に求められるもの−

 本年秋から畜糞処理3法が完全実施される中、鶏糞処理のより効率的、効果的処理が求められています。

 現在の処理方法の主流は発酵による有機肥料化ですが、有機肥料の需要バランスの関係から、全国平均成鶏1羽当り年間80円前後の損失が発生しています。

 この損失の軽減を目指し発酵処理方法の一層の高度化、或いは鶏糞を燃料化し発電(鶏糞は水分の除去をすると石炭の約半分3,000Kcal/Kgのエネルギーがあります)、機械化が進むレイヤー農場の電力自給の一部とする等、鶏糞処理の多様化及び高度化への研究開発が求められています。

 完成度を高めている鶏舎システムに更に高度化した鶏糞処理システムが融合されて行くところに次世代のレイヤー農場が開けて行くと考えられています。
以上





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