工場暖房・体育館暖房、定量ポンプ、給餌・給水システムの鶏舎は株式会社ハイテム

  2005年2月号


二世のためのレイヤー設備講座

第3回 給餌、給水システム



担当: おやじ / 弊社社長 安田 勝彦



講師/おやじからのお願い
 個人的な話をし恐縮ですが、33年前、私は当時の先端産業、石油化学業界の三菱油化(現在、三菱化成と合併し三菱化学)から10年のサラリーマン生活の後、ゲンコーポレション所元会長との地縁(岐阜県出身)から、ビジネスチャンスの話(当時、ハイラインは現在のゲンコーポレーションのトリ同様、高いシェアーで絶好調)「日本の養鶏はこれから設備の革新が進むと」の一言に若気の至りで180度別世界のこの世界に入りました。 ところが直ぐ売れるものは無し、金は無し、人は無し、目標の可能性が唯一の支えで、文字通りゼロからのスタート、大げさのようですが死闘の毎日でした。 養鶏場の現場で観察、考えることを基本に仕事を進め、応援いただける方との出会いの中、ここまで来ました。 養鶏は生き物が原点であり、儲かる経営は養鶏現場が原点であることを痛感しています。

 毎日現場に立たれている皆様から、ここはこうではないか、ここはこうすればもっとよい養鶏ができるのではないかと云う点があれば、是非指摘を頂き、教えていただきたいと思います。メールアドレス yasuda-k@hytem.com までお知らせいただければ幸いです。
(注)ウイルス対策のため、添付ファイルがある場合はファイル数をタイトル欄にご記入下さい。

 時間と人材の制約の中、直ぐ対応できないことが多いと思いますが、海外のパートナーも含め取組みます。 ヨーロッパは観念、政治が先行し、消費者、生産者の思いとは別に平飼に走っています。 アメリカは、養鶏の生産コストの三分の二を占めるエサ代が日本の半分でそのままを学ぶことはできません。 生産調整が自由化される環境下、海外は一つのヒントに、日本の養鶏は、日本で考える時代になりました。
 私共、設備の業界もそうですが、厳しい時代に入っていると同時に、やる気のある人、会社にはやりがいのある時代になっていると考えます。
 よろしくお願い致します。

給餌システム

給餌、給水は換気とならんでトリの性能を引出すための大切な要素です。
管理環境を考えシステム、機種を選びます。
給餌機を考える上での主なポイントは次の6点です。

@全てのトリに均一成分のエサを配ることができるか
A全てのトリに新鮮なエサを配ることができるか
Bエサ均しができるか
Cエサこぼしを抑えるエサトイ形状か
Dトイへのエサのこびり付きはどうか
E強換時トイの中に入り込む羽根の始末はどうか

 実用化されている給餌システムとして次の三つの方式があります。
 1.ホッパーフィーダー
  1)@、Aを満足し、Dについては管理に依存するシステムです。
    B,C,Eについてはメーカーにより差があります。


エサ均し性能を備えたホッパーフィーダー例


エサこぼしを抑えたエサトイ例

  2)ホッパー容量
途中でエサ切れを起こさないよう留意する必要があります。
必要な容量は1回あたりの給餌量により変り、又、強換の時の要素も考えた
容量にしておく必要があります。
特に、往復で給餌するタイプの給餌機でケージ列が長い場合は、復路でエサホッパー内の
エサがなくなる場合があり、エサレベルの管理がむつかしくなります。 このような場合は、
若干費用はかかりますが、搬送ラインをケ−ジ列中央点まで延長しケージ列中央で
エサの補給をします。


ケージ列の中央に搬送ラインを設置している例

  3)サーボモーター配餌型ホッパーフィーダー
ケージライン毎のホッパーに小口径オーガーを取付け、これに小型サーボモーターを連結、サーボモーターの回転数制御でケージライン毎に所定のエサを配餌するホッパーフィダー。 このシステムではトイの中に残っているエサ量をレベルセンサーで感知し、エサが一定量以上ある場合は配餌オーガーを止めエサ均し効果を狙っている場合もあります。 10〜20年前広く採用されましたが、機械が複雑になる傾向があります。



サーボモーター配餌型ホッパーフィーダー

 2.フラットチェーン
C、Dを満足し@、A、Eについてはむつかしいシステムです。 Bはメーカーにより差があります。 @、Aはケージ列が長くなると問題が目立つようになります。 搬送ラインをケージ列中央点まで延長し、中央点にホッパーを設けることにより、問題を少なくすることができます。


フラットチェーン取付け例

 3.ウルトラフレックス
スプリングオーガーが高速配餌する方式で、十数年前に開発され、給餌機としては一番歴史の新しい方式です。 @、B〜Eを満足し、Aについても配餌中はトリが殆ど食べることができないので実用的には満足しています。 発売当時はオーガー材質、ケージ  列長さに対してのドライブユニット数の選定等に問題があり、オーガー切断等の問題がありましたが、特にEUメーカーの最近の製品についてはトラブルフリーで、他の給餌システムに対して若干コストアップになる点以外は、給餌機に要求される@〜Eの全ての性能を備えており、今後もっと注目されてよい給餌システムと云うことができます。



ウルトラフレックス取付け例


給水システム

レーヤーの給水システムはほぼ100%ニップルになりました。
私が30年前養鶏設備の仕事を始めた頃は殆どが「かけ流し」といわれる流水トイで、
流水トイゆえ鶏舎には勾配がついているのが一般的でした。
流水トイがニップルに代わった理由は三つあります。
@特に夏期、飲水過多にブレーキがかかり軟便対策になる。
A養鶏場の排水問題対策が大きく前進する。
B全てのトリに新鮮な水を与えることができる。



給水システムの標準になったニップル

 ニップルは一見したところどれも同じように見えますが、メーカー間の品質、性能にかなりの差があり、且つ同一メーカーの製品であってもタイプにより性能の差があります。トリの性能を最大限引出す鍵の一つを握っている給水システム、ニップルの正しい選定をするためのポイントを記します。

 育成の給水は特殊な要素があるため、成鶏用について話を進め、その後、育成用につき留意点を述べます。


 1)1分当り流水量
ニップルは減圧システムで30センチ前後の水圧に落として使用します。
30センチ水圧で1分当り、30ccから120cc前後のタイプがあります。
成鶏で1分当りニップルから飲める水量は70cc前後といわれています。
70cc以上流量のニップルを使用する場合は、飲みきれない水が鶏糞等を濡らすおそれがあるため、ニップルの下方に水のしぶき受け、ドリップカップを取付けます。
  (注)使用中のニップルの流量は、水圧を確認の上、ニップルの下にコップを用意し、
         ニップルのピンを1分間押し続けることで測定できます。
流量50cc前後でドリップカップを使用しないニップルは特に米国を中心に使用されていますが、70cc流量のニップルと比較し、トリの成績にどの程度の影響があるのかは、はっきりしたデータがないのが現状かと思います。

 2)ニップル内のバルブ構造
ヨーロッパ系のニップルは金属(通常ステンレス)接触のみによるバルブ構造で、米国系のニップルはゴム系のパッキングを使用したものがあります。
パッキングを使用したニップルは、年数を経ると水漏れを生ずる傾向があります。
金属接触のニップルは、例えて云えば刃物の刃先で水のオンオフをしている訳ですから非常に高い加工精度が要求され、且つ、製造後全数検査が必要です。
このような工程で製造され、且つ二重のバルブ構造を持ったニップルは長年トラブルフリーで使用することができます。



二重バルブ構造を備えたニップル例


ニップル全数検査機(独ルービン社)

 3)ニップルパイプ内のエアー
ニップルは30cm前後の極めて低い水圧で作動する給水システムのため、鶏舎勾配はゼロでニップルパイプはエアーがかまないようストレートが原則です。
既存鶏舎の改造等でこの原則から外れざるをえない場合は設備会社と相談等対策を立てます。


 4)育成用ニップル
   次の点の留意が必要です。
   @ニップルピンのサイドアクション
成鶏用ニップルはトリがピンを下から押上げることにより水が出ます。
ヒヨコはピンを下から押上げることがむずかしいので、横からつついて水の出るサイドアクションタイプのニップルを1ケージ内に少なくとも1個取付けます。



サイドアクションの育雛用ニップル

  Aニップルの高さ
ヒヨコが頭を真上に向けて飲める高さが基準です。 小さめのヒヨコが混じっている時はこの基準より下げざるをえない場合がありますが、水こぼれが出やすくなるので注意します。 ヒヨコの成長に合わせこまめに高さを調整します。


 5)ニップルパイプ内のフラッシュイング
ニップルパイプ内は、特に栄養剤等を投与した場合汚れやすく、又藻が発生することがあります。 衛生問題のほか、水の出が悪くなったり、水漏れの原因になります。オールアウト時のクリーニングのほか、必要により、簡単に減圧をバイパスし給水の直圧をかけクリーニングできることが望まれます。
減圧システムのバルブ操作でクリーニングできるオートフラッシュの取付けをお奨めします。



フラッシュバルブのついた減圧弁


オートフラッシュを可能にするケージ列端末の排水管

 6)水質
一定以上の大きさの異物が水に混じっているとバルブにからみ水漏れの原因になります。
140メッシュ(100ミクロン)のフィルターを減圧装置の上流に必ず入れます。 又、カルシュウム分、鉄分等が多い場合はこれらの化学成分がニップルのバルブ部分等に沈着しトラブルの原因になるので水質検査を行い必要により水質改善の対策を行います。
 (注)水質に要求される主な項目を記します。

PH  6.5〜9.5
カルシュウム 400mg/リットル以下
硫酸塩 240mg/リットル以下
硝酸塩 50mg/リットル以下
塩化物 250mg/リットル以下
鉄分 0.2mg/リットル以下

消毒の時に使用する薬剤等にも注意が必要です(特に本体がプラスチック製のニップルの場合)。 詳しくはお問合せ下さい。


 7)水量計
飲水量を把握することは、給水システムの異常チェックになると同時に、給餌量のチェックにもなります。 ケージ列毎の水量計取付けをお奨めします。


以上





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