2005年4月号
二世のためのレイヤー設備講座 第5回 換気、ファームコンピューター 担当: おやじ / 弊社社長 安田 勝彦
換気 トリの成績を出す基本は、新鮮なエサ、水、換気と云われています。 換気環境はウィンドレスと開放に大別することが出来ます。 ウィンドレス 空気を設計通り動かせるウィンドレスから話を進めることにします。 ウィンドレスには空気を押込む陽圧換気と、排気側に換気扇を取付ける陰圧換気があります。 陽圧換気 1.主な特徴は次の二点です。
1)排気側に換気扇がないため排気スピードが緩やかで、鶏舎内のホコリが鶏舎外に出にくい
2.注意しなければならないのは次の点です。(その分鶏舎の中はホコリが多くなります。 特に排気口に近い通路はホコリがたまります)。 2)気密性の悪い鶏舎に採用しても外風の影響を受けにくい。
1)舎内風速が出しにくく、夏場に弱い鶏舎になりやすい。
2)冬期換気量が減ったとき、押込まれた空気が舎内に均等に行き渡るか。 3)天井裏等をダクトにする必要があり、この部分の汚れ、ネズミ問題。 4)換気扇に直接外気があたるのでモーター漏電等を起こすことがある (鶏舎が海に近い場合特に気をつける)。 図5−1: 陽圧鶏舎例 写真5−1: 陽圧鶏舎 陰圧換気 特徴、注意点は陽圧換気とうらはらになります。 陰圧換気は、屋上排気、横断換気、縦断換気の三つの方式に大別することができます 1.屋上排気 図5−2:屋上排気例 写真5−2:屋上排気鶏舎
1)特徴 換気扇が建物屋上にあり、換気扇が停止してもシャッターを開ければ自然換気が可能で 停電に対し安全性が高い。 2)注意すべき点 @舎内風速が出しにくいので夏場対策に注意する。 A換気扇を屋根につけるので、建設コストが上がりやすく、且つ雨仕舞に注意する必要が ある。 2.横断換気 高床ウインドレス、低床Aライン鶏舎には広く使用された換気方式ですが、最近ではほとんど 使用されなくなりましたので、省略します。 3.縦断換気 トンネル換気と云われる換気方式で、最近は9割以上がこの換気方式になりました。
1)トンネル換気鶏舎は次の特徴を有し、特にクーリングパッドを使用する鶏舎に多く使用されて 来ました。 @設備コストが安い( @ ウィンドレス電気工事の大きな比重を占める換気関係電気工事 のコストダウンが可能、A 天井をなくすことが可能)。 Aランニングコストが安い(トンネル風速効果により羽当り総換気量が少くてすみ夏場の 換気扇電気代が少い)。 B空気がトコロテン式に抜けて行くのでデッドスポット(舎内空気の部分的なよどみ)が 出にくい。 C舎内のホコリが少くクリーン。 D舎内風速が出しやすいため夏場に強い。 2)しかし従来のトンネル換気鶏舎には次の欠点がありました。 @冬場の鶏舎前部と後部の温度差が大きい(外気温が0℃前後の場合10〜20℃差)。 A鶏舎排気側にホコリが飛散する。 B排気扇附近のトリが傷む。 C停電に弱い(万一発電機が稼動しなかった場合の事故)。 3)従来のトンネル換気の欠点を解消すべく数年前に弊社が開発したのが新トンネル換気 で 次の特徴を有しています。 @鶏舎妻面から入気する夏モードと、妻面をパネルで閉じ軒から入気する冬モード(必要に より一部妻面から入気する中間期モード)を切り替える。 A冬モードでは軒入気の入気インレットを建物長手方向に分割し(鶏舎70m以下 2分割、70m超3分割を基準)それぞれのインレットに対応するセンサー信号で インレットの開閉をコンピュータコントロールする。 B排気側妻面にダストチャンバーを設ける。 C万一発電機が作動しない場合に備え、インレット及び非常窓の非常開放システムを 備えることができる。 図5−3:新トンネル換気鶏舎例 図5−4:新トンネル換気鶏舎立面図
写真5−3:新トンネル換気鶏舎 開放鶏舎 事実として進行中の地球温暖化に対応し、これからの開放鶏舎はしっかりした夏場対策を求められています。 冬場については、信頼のおけるカーテンコントロールを導入すれば(弊社システムの場合は鶏舎管理制御盤内のコンピューターによる制御)、温度維持能力はウィンドレスと大差がなくなってきています。 ここでは、夏場対策付システム開放鶏舎 につき述べます。 夏場対策付開放鶏舎のケージシステムは、直立ベルトケージが採用される場合が多く、これを前提に話しを進めます。 図面と写真で例を示します。 図5−7:夏場対策付システム開放鶏舎例 写5−4:夏場対策付システム鶏舎外観 写5−5:鶏舎内部 1.停電時自動開放カーテン
夏場対策付システム鶏舎は、夏場、カーテンを完全に閉め切るため、停電時カーテンを自動開放することが望まれます。 停電時に備えバッテリーバックアップを装備します。
2.モニター
夏場以外は自然換気を効果的に行うため大き目のモニターを備えます。
3.クーリングパッド非常用発電機は装備しないことが多いので、停電時自動開放カーテンの機能を十分活かすため、モニターは大切な非常時機能も果たします。
関東以西の農場で、水源水量に問題がない場合は、鶏舎前部にクーリングパッドを備えます。 水量はほぼ飲水量相当必要です(2万羽であれば、4トン/日が目途)。
4.トンネル換気扇及びダストチャンバー
夏場対策用換気扇は鶏舎後部妻面に集中して取付けます。
5.ケージシステム排気ホコリ対策として建物棟までの高さのダストチャンバーを設置します。
冬期の舎内温度維持のためにはある程度のトリの収容密度が望まれます。 中間通路付6段、又は4〜5段の直立ベルトケージが多く使用されます。 糞乾システムは、自然換気時の無風時対策を兼ねウィスクは一つの良い選択です。 糞乾電気代がエアパイプの約半分で済むのもメリットです。 ファームコンピュター コンピュター機器の低価格化、換気コントロールのコンピューター化による機器共用による更なる低価格化により、最近の8割以上の設備更新にファームコンピューターが装備されるようになりました。ファームコンピューターは約20年前、米国のインライン農場で実用されるようになりました。 この講座では、米国で実用化されていたシステムを参考に、弊社が、日本の養鶏現場のニーズを汲み上げ、十数年前からハード及びソフトの開発を進めてきたハイテムファームコンピューターシステム について話をします。 ハイテムファームコンピューターシステムには三つのシステムがあります。
@農場の基幹情報をリアルタイムで伝えるファームマネジャー
@、Aはハードを共有し、Bを導入する場合は、同ハードに追加ユニットを組み込みます。A鶏群成績速報のファームスタッフ B集卵の効率化を図るエッグフローコントロール 1.ファームマネジャー
ステータス情報が基本になります。 ステータス情報には、各鶏舎の状況を示す基幹データ(温度、給餌量、給水量、集卵個数)が刻々表示され、基幹データに異常がある場合は、警告(セルが黄色になる)、次は警報(セルが赤色になる)で知らせます(異常値は管理の考え方により自由に設定可能)。
図5−8:ステータス画面
管理者はステータス画面で警告が出た鶏舎の各種詳細画面にアクセスし状況を分析、最高の成績を目指し、直ちに必要なアクションを起こすことができます。
図5−9:警告を発しているステータス画面 図5−10:詳細画面の一例 給餌、給水グラフ 10分毎の飲水量を棒グラフ化することにより採餌量の推移を知る
リアルタイム表示のファームマネージャーと事務所で鶏群別に管理されている集計ソフトとのつなぎの役を果たします。管理者に鶏群成績の現在ロケーションを素早く伝え、的確な管理方針を立てやすくします。
図5−11:週報 図5−12:成績指標グラフ 成績展開、指標との対比が刻々手にとるようにわかります
コンピューターに設定した卵数をターゲットに、鶏舎内エッグカウンターの情報に基きケージベルトスピードをインバーターで自動調整しながら、洗選卵機又はパッカーにタマゴを送り続けます。
写真5−6:エッグフローコントロール 設定卵数をターゲットにスムースに流入するタマゴの流れ
以上
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