2005年6月号
二世のためのレイヤー設備講座 第7回 鶏糞処理 担当: おやじ / 弊社社長 安田 勝彦
鶏糞処理は、日本の多くのレーヤー農場に於いて改善余地がある問題です。
鶏糞処理にかかわる問題点は農場により異なりますが、主な問題点を列挙すると次の通りです。 @ 鶏糞水分が高く発酵が順調に進まない。 A 冬期の発酵処理が順調に進まない。 B 発酵に伴う臭気に対し近隣から苦情がある。 C 発酵鶏糞の販売に苦労している。 D 発酵処理に係る費用が増大してきている。 現在行われているほとんどの鶏糞処理は発酵方式です。 堆積方式、開放型攪拌方式、密閉型攪拌法式等いくつかの方式がありますが、皆さんの農場でも実際に使用されている場合が多いと思いますので、本講では上記問題点を念頭に未来指向で新しい観点から考えてみたいと思います。 1.鶏舎排気乾燥 成鶏は1時間平均4kcalの熱を空気中に放散しています。 3万羽の鶏舎には、12万kcal/hの温風機があると考えてもよいわけです。 この熱は通常空気中に廃熱として排出されているわけですが、これを鶏糞処理に活用しようというのが鶏舎排気乾燥です。 約10年前に実用化されたのがベルトドライヤーと呼ばれる方式です。 オランダで開発され、日本でも稼動中ですが、除糞ベルトを多段に使用するため、メンテナンスに留意しなければならない点、同装置への生糞充填に時間がかかる点 (1万羽当り約22分) に、改善の余地を残していました。 写真7−1: ベルトドライヤー
この点の改善を図ろうとフランス大西洋岸の畜産地帯ブルターニュで開発されたのがセコノブです。
生糞を、前日投入し乾糞になっている鶏糞に混入し、水分約50%に調整した上、二重デッキ上に約20センチの厚さに敷き込みます(写7−2〜6) 写真7−2: 手前が鶏舎からの生糞、奥が生糞、乾糞ミキシングオーガー 生糞投入時間は1万羽当り約6分でベルトドライヤーの約4分の1 写真7−3: 水分50%に調整されワゴンに投入される混合鶏糞 写真7−4: 混合鶏糞をデッキに敷き込んでゆくワゴン 写真7−5: 二重デッキに敷き込まれた混合鶏糞 写真7−6: ミキシング、ワゴンの運転、送風等をコントロールする セコノブ日本仕様ハイテムセコノブの制御盤
二重デッキ下部から鶏舎排気が鶏糞層を通過し、水分を奪ってゆき、充填(朝)数時
間後、鶏糞層下部の鶏糞は水分15〜20%になります(図7−1)。
この段階で二重デッキに組み込まれたデッキスクレーパーがゆっくり動き、 乾糞を二重デッキ下の陽圧室に落としてゆきます(特許)。 翌朝の生糞充填時までにデッキスクレーパーがタイマーで数回作動し、敷き込まれた 混合鶏糞は乾糞となって陽圧室床に数センチの厚さで堆積します。 図7−1: セコノブシステム図 陽圧室に堆積した乾糞はスクレーパーで搬出され、1)で述べたミキシング用に使用される分量以降の乾糞が装置外に搬出されます(写7−7)。 写真7−7: セコノブで得られた乾糞 写真7−8: セコノブ導入例 (左側建物-6万羽用) 2.ハイテムセコノブの位置付け
1) ハイテムセコノブは、1日で乾燥するシステムで発酵を伴わないので、冒頭で述べたBの問題解決で一歩前進できます。
通常、ハイテムセコノブからの排気臭は問題になりませんが、市街地等で僅かな臭いでも問題になる場合は、排気量が少ないためその対策を立てられる可能性があります。 2) ハイテムセコノブ乾糞は水分調整用に非常に有効です。 (1) 問題点@解決のための水分調整用として効果を発揮します。 本年6月時点、7農場にハイテムセコノブが導入されていますが、5農場はこの目的に 使用されています(2農場は後述の発電用)。 (2) 例えば、6棟の鶏舎があった場合、3棟にハイテムセコノブを設置し、3棟には糞乾 (エアパイプ等)を設置しないで、排出された鶏糞をそれぞれ1:1で横引き鶏糞コンベアの 端末で発酵施設に投入すると、発酵処理に理想的な水分約60%の鶏糞を得ることが できます。この方式による糞乾電気代はエアパイプとウイスクの中間的なコストになります (表7−1)。 シンプル且つランニングコストの安い鶏糞処理で今後注目されてゆく方法と考えられます。 3) 鶏糞発電 2〜3日で水分15〜20%になった鶏糞は、石炭の約半分、乾物ベース2,500~3,000 kcal/hの高いエネルギーを持っています。 インテグレーションで鶏舎が一定地域に集中しているブロイラーでは、ブロイラー鶏糞に敷料が混じっていて燃焼させやすいこともあって、発電に活用することが実用化されつつあり、宮崎県で3年前から1800kwhの鶏糞発電所が稼動を開始し、南九州ではブロイラー鶏糞を利用する発電所が更に2箇所で計画されています(英国では約10年前からブロイラー鶏糞発電が実用化されています)。
ある程度の規模以上のレーヤー農場の場合、インフルエンザ等防疫上、或は公道輸送による公害問題懸念等から、農場単位規模でリーズナブルな価格で分散型発電が可能になれば、@〜D全ての問題解決が図れる可能性があり、レーヤー農場に大きなメリットをもたらす可能性があります。 未だ具体的にお話できる段階ではありませんが、3〜4年後には実用化される可能性があります(写7−9)。 写真7−9: 分散型鶏糞発電の実証用テストプラント
以上
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